2005年06月21日
第300話(最終回 メカ式腕時計の今後)
- isozaki-tokeiten
- 09:46
- コメントする 店主の私事、私見 /時計の小話(201~300話)
それまでの腕時計の概念を大きくうち破るセイコー・クォーツアストロンが、1969年に登場して以来、機械腕時計は、斜陽の一途を辿ってきました。 1980年後半までには、数多くのスイス時計メーカーは、 クォーツクラッシュにより、市場から淘汰され、消え去って逝く運命になりました。 機械式腕時計の運命は、クォーツの出現により、風前の灯火まで追い込まれていったのです。
1990年前後になると、機械式腕時計の良さや、温かみが、一部の時計愛好家に再評価され、 時計店の店頭にも、少しづつ飾られる様になってきました。 今日では、弊店の販売シェアは、全体の80%近くにまで伸び、 逆にクォーツが売れなくなってきています。 このような状況を10数年前には、誰が想像出来たでしょう。
高級時計、中級時計は、メカ式腕時計が大多数を占め、 クォーツと言えば低価格品のみが売れていくという、現状です。 高価格クォーツ(例えば、グランドセイコー・クォーツ等)は、これからますます苦戦していき、 クォーツと言えば近い将来、低価格のソーラ電波腕時計に占められてしまうのではないか? と予感しています。 メカ式腕時計が現在、ユーザーの方の圧倒的な支持を受けているのは、事実でしょうが、 これとていつまでも続く人気だと錯覚して、安穏としていれば、 大きな落とし穴にはまると思います。
クォーツは、故障しにくく、オーバーホールの期間も7年~10年近く持つのですが、 メカ式はそういう訳にもいかず、必ず3、4年後にオーバーホールの時期が到来します。 OH後のその時に、新品時と同等の機能と精度が回復していればいいのですが、 もし、アフターケアがうまくいっておらず、ユーザーの方に 『日本の時計修理技術は、こんなものか』と失望させてしまったら、 折角メカ式腕時計へ、回帰してくれたお客様が、再度離れていってしまい、 クォーツを再評価して、メカ式がまたもや、市場から淘汰されてしまう、 という懸念が多分にあります。
ユーザーの方のメカ式腕時計への熱い支持を今後もとり続けていく為には、 完璧な修理技術を習得した、時計職人の養成が急務の必須の条件だと思います。 現在、販売したメカ式腕時計を自店で修理する店は、ほとんど無い状態なので、 時計店経営者が、輸入元サービスセンターのみに頼らず、自店で修理技術者を育てていく 心構えが、必要だと思います。 全ての時計店が、自店で時計修理をするには限界があると、思われますので 輸入元サービスセンターも、ロレックス社の様に日本全国に、 くまなくサービスセンターを設置して、迅速で完璧な修理体制網を構築しないといけないと 思います。
メカ式腕時計が今後もユーザーの方に支持され、普及してゆく大きな要素の一つに、 時計店、輸入元の経営者が時計修理体制をいかにするか?にかかっていると言っても 過言では無いでしょう。
<執筆後記> 平成12年6月中旬に『時計の小話』第一話を書いて以来、丸五年で丁度300話で 完結致しました。 この5年間に多くの方々の温かい励ましのメールのお陰で、やっとゴールに到着しました。 ここに謹んで、読者の方々の皆様に御礼の言葉を申し上げたいと思います。
『本当に、五年間、ご愛読ありがとうございました。』
時計の小話を書く事により、日本各地から、多くの方々から、修理依頼を受け、 いろんな時計メーカーの腕時計のムーブメントを触れる事が出来ました。 この事も、大きな時計職人の喜びでもありました。
このメールマガジンを読んで下さった多くの方々の中に、かつてセイコーにこの人あり、 と言われてこられました、東谷宗郎先生、小牧昭二郎先生、依田和博先生からも、 応援のメールを頂戴し、光栄に思っております。 また、CMW試験の同期の遠藤勉氏からはアメリカから電話を頂いた事も、嬉しい出来事でした。
この時計の小話を読んで下さった読者の皆様に、時計を購入する時のアドバイスの 一端になったとしたら、これほど、嬉しい事はありません。 これからも『時計の小話』を続けて欲しいというメールを沢山頂いています。 身に余る光栄と思っております。 嬉しい反面、また大変なプレッシャーがかかるのも事実ではございます。 想を新たにして、しばらく休憩後『続・時計の小話』を不定期に発行する予定でおります。 また引き続き読んでいただきましたら有り難く思っております。
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第275話(長野県の時計職人試験について)
第274話(『クロノメーター』合格規格品)
第273話(クィーンセイコーについて)
第272話(現行の手巻の名機)
第271話(アンティーク、パティック・フィリップの修理依頼)
第270話(女性用メカ式)
第269話(神戸のアンティーク・ウォッチ・ショップ)
第268話(ロレックス・チェリーニについて)
第267話(盛岡セイコー工業(株)について)
第266話(メタルバンド・アジャスト方式)
第265話(ハミルトン カーキ・ネイビーGMTについて)
第264話(時間との戦い)
第263話(アンティーク・ロンジンの修理)
第262話(ティソ・デッド・ストック)
第261話(アラーム機能付き腕時計)
第260話(多石化競争)
第259話(カレンダー瞬間早送り機構について)
第258話(ユーロ(株)展示会)
第257話(バーゼルフェア)
第256話(長野県発・時計修理資格について)
第255話(フランクミューラーはどこへ行く?)
第254話(パーツの入手について)
第253話(耐震装置・押さえバネ)
第252話(掃除木)
第251話(オメガ・スピードマスター その2)
第250話(オメガ・スピードマスター その1)
第249話(サービスセンターについて)
第248話(日本でのスイス腕時計の販売動向)
第247話(ティソの思い出)
第246話(難物修理について)
第245話(ハミルトン腕時計について)
第244話(婦人用IWCマークXII)
第243話(バネ棒)
第242話(メーカー修理対応について)
第241話(44GSのOH)
第240話(エボーシュ・メーカーについて)
第239話(トランジスタ時計)
第238話(時計洗浄について)
第237話(アンティーク・ジラールペルゴの修理について)
第236話(日本とスイスの時計産業の位置関係)
第235話(ネジについて)
第234話(ドイツのマイスター制度)
第233話(埋もれたロレックスの名機)
第232話(記念の腕時計)
第231話(スター選手の腕時計)
第230話(新ムーブメント開発競争)
第229話(子供用機械式腕時計)
第228話(時の浪漫)
第227話(懐かしいご縁)
第226話(エポスについて)
第225話(時計修理技能士試験の最近の動向)
第224話(技能競技大会について)
第223話(ピンセットについて)
第222話(厄介な作業)
第221話(腕時計ケースについて)
第220話(女性用電池腕時計の登場)
第219話(61グランド・セイコーについて)
第218話(時計店の業務の変換)
第217話(ガンギ車の錆)
第216話(ザラ回し)
第215話(夏の思い出)
第214話(シチズン・コスモトロン・スペシャル)
第213話(NHKにて)
第212話(ロレックスの仕入れについて)
第211話(シチズン・音叉式ハイソニックについて)
第210話(セイコー・ダイヤ・アジャスト機構について)
第209話(アンクルについて)
第208話(時計設計師と時計技術者)
第207話(オメガ30mmキャリバー)
第206話(シチズンレオパールについて No.2)
第205話(シチズンレオパールについて)
第204話(時計修理の将来は)
第203話(人気のノモスについて)
第202話(シチズン自動巻の名機)
第201話(シチズンの自動巻・ジェット)